明治時代の花火「半菊弓張星」を読み解く｜技藝百科全書より

半菊弓張星

これは半輪の菊花と輪星の半輪を現すものなり。
白焔剤のものにて輪形な開かしむるを星輪、或いは輪星と云い、その半分を現す弓張星、又は弓輪星と称す故にこの煙火は丸く現わるると言えども、その半ばは菊を以って成り立つ。
半は星輪を以って形造らるるなり。
この煙火の構造は殆ど難易を折仲したるものなり。
如何となれば此れ全く星輪なるものは之を満足に現すこと余程難きものなり。
ややもすればその形楕円をなし、又星の不揃いを免れず、或いは各星の同時に消えざることあるものなり。
然るとも菊は又その組立法に従って構造するときは、十中の八九は仕損じなきものなりとす。

最初より半ばに至るまで菊の構造に等し。
半ばに及んで張り子の合わせ目にあたる部分の半周一列白焔星を列せしめ、それより再び最初と等しく中心に破砕薬を包んで、菊粒を詰むるなり。
そして片方の張り子を以って覆いこれより留め張りとなる。

全て丸玉を構造するには、最初用意したる半分の張り子をとり、その中に一枚の半紙をしかさるべからず。
さすれば半紙はその周りに余程余りて出ずべし。
かくのごとくなして後に傅火の根本より、菊粒を一粒並べに入れ、そしてその傅火管は適宜の量を包みたる発薬の中に差し入るるなり。
傅火管はほとんどその張り子の合わせ目、即ち切り口にまで出てたるを以って発薬す。
必ずこれ合わせ目の処に置かざるを得ざるべし。
故に今片方の半分を以ってこの張り子に合わせ、全く丸形になすときは、発薬はその中心となるべきなり。
右の如くまず半分の張り子内に半ば発薬を包んで詰め込み、それより周囲に余りて出でたる半紙を起こして潰れ落ちざる様、次第に薬の上に積み上げ以って、その中に包み込むなり。
後にその紙を以って上より包み始めて片方の張り子をこの上より合わするの順序となるなり。
もし詰め込みに際し、ガタガタする如き隙間あらば、炭の一片等にて補うべし。
以上は星輪等を除き最も菊類を仕込む方法なりとす。