明治時代の花火「小菊畑玉吹夫婦龍」を読み解く|技藝百科全書より
もくじ
小菊畑玉吹夫婦龍とは?
「小菊畑玉吹夫婦龍」は、小菊が多数打ち上がり、その中から2匹の玉吹龍(火花を吹く龍)が飛び出す構成の花火です。
名称の通り、「夫婦」のように寄り添う2匹の龍が最大の見どころです。
製作構成と手順
1. 小菊の作り方
- 14〜15個程度の小菊を使用
- 形状は三角形か、通常の丸玉の極小型を使用
- 構造は通常の菊玉と同様
- 導火管は使わず、太い誘火紙の撚りで点火
2. 玉吹龍(夫婦龍)の配置
- 火花を吹きながら飛び出す仕掛け「吐玉龍」を2匹配置
- この2匹の龍を「夫婦龍」と呼ぶ
3. その他の仕上げ
- 構造や仕組みは他の夜花火とほぼ同じ
- 小菊と龍の組み合わせで華やかさを演出
現代との比較・考察
現代では小菊と龍を同時に演出する構成はほとんど見られません。
点火に導火線を使わず、撚った誘火紙で対応する工夫は、明治時代ならではの技術。
「夫婦龍」という名称も、演出に感情や意味づけを与える要素となっています。
参考文献
- 『技藝百科全書 第五編』
- 著:内山正如・野口竹次郎
- 発行:博文館(1889年)
原文(技藝百科全書より)
▼ 原文を表示する
小菊畑玉吹夫婦龍
数多の小菊を現はし、その中に二匹の玉吹龍を現はす。
小菊は、あるいは三角形に造るもあり。
また通常丸玉の最も小さなるものを用ゆるもあり。
然るども皆一個の菊と等しく組み立てるより成り立つものなりとす。
その数十四五而して皆傅火管を用ひず単に太き誘火紙の小撚りをもって傅火の媒介をなさしむ。
龍は吐玉龍を二つ仕込むのみ。
他は夜打ちの部に同じ。
次回は「若娘初寝桜」をご紹介します。幻想的な名前の花火、その中に隠された演出とは?