明治時代の花火「若娘初寝桜」を読み解く|技藝百科全書より
若娘初寝桜とは?
「若娘初寝桜」は、明治の花火職人が「通常の桜より美しい」と表現した特別な桜花火です。
名称からしても情緒豊かで、優雅さを感じさせる作品です。
製作構成と手順
1. 材料の準備
- 紙のサイズ:幅二寸(約6cm)、丈四五寸(約13〜15cm)
- 紙の枚数:20〜30枚
- 点火用:誘火紙
- 保護用:板紙2枚
2. 組み立て手順
- 製紙を一束にまとめ、一端に誘火紙を通す
- 誘火紙が全体に火を伝える構造に設計
- 発火薬の近くに誘火紙を配置
- 上から2枚の板紙を重ねて覆う
- 最後に留め張りで固定して完成
現代との比較・考察
現代の花火は火薬による爆発的な広がりが特徴ですが、この花火は紙の構成と燃焼で優雅な開花を演出します。
名前からしても、明治の花火に詩的な感性が込められていたことが伝わってきます。
参考文献
- 『技藝百科全書 第五編』
- 著:内山正如・野口竹次郎
- 発行:博文館(1889年)
原文(技藝百科全書より)
▼ 原文を表示する
若娘初寝桜
通常の桜に勝りたる美なる桜を現すなり。
そしてこの桜は先に第十八桜製法に述べたる如く、巾二寸、丈四五寸の製紙なり。
これに組み立てるには、普通二三十枚を集め、その一端に誘火紙を通し一時に残らず火を受ける様に仕掛けて、これを発薬に接近せしめ、上に二枚の板紙を覆いて後、留め張りをなすべし。
次回は「雨中雷後の遊龍」をご紹介します。雷鳴と雨が交差する幻想的な花火、ぜひご期待ください。