明治時代の花火「黒玉・直開き・出損じ」を読み解く|技藝百科全書より
もくじ
失敗の種類と分類
明治22年の『技藝百科全書』では、花火がうまく開かない原因を「黒玉」「直開き」「出損じ」に分類して説明しています。
花火師の世界では古くから、失敗の原因を特定することが品質維持の基本だったようです。
黒玉の原因(打ち上げたが開かない)
- 導火管が小さすぎる
- 導火薬の漏れ
- 導火管内の異物
- 打ち上げ筒底からの水分侵入
直開きの原因(打ち上がらず開いてしまう)
- 張り子が柔らかすぎる
- 導火管が抜け落ち、直接火が入る
- 導火管周囲の強度不足による「いみわれ」
出損じの原因(打ち上がるが設計通りに開かない)
- 発薬の量が多く、火が充満する前に破砕
- 雷丸が張り子内で爆発する
- 誘火紙の貼付不良
- 衣掛け作業の不備
- 糊が多すぎる練玉の使用
現代との比較・考察
黒玉や直開きといった失敗を防ぐには、素材・手順・環境すべてのバランスが必要でした。
現代の職人も昔の職人も、一つひとつ手作業で完成度を高めていたのです。
参考文献
- 『技藝百科全書 第五編』
- 著者:内山正如・野口竹次郎
- 博文館(1889年)
原文(技藝百科全書より)
▼ 原文を表示する
黒玉、直開き、出損じの原因
黒玉となるの原因種々あれども、傅火管の小なると、傅火管の薬漏出せると、傅火管の薬中に妨害物あると、管口が筒の穴底に至り水分を侵入せらるるとに因るもの多し。
直開きは張り子の柔らかきより破らるるものと、傅火管の抜け出て直ちに玉の中に火を傅ふるに至るものと、傅火管の周囲丈夫ならざる為に「いみわれ」て火の注入せらるるに依る。
組み立て不明、すなわち出損じは発薬の多量なるが故に張り子の中に火の充満するに及ばさるに空気すでに非常に膨張して張り子を破砕するによる。
あるいは雷丸の張り子中にて爆発せしによる。
あるいは誘火紙貼用の粗漏による。
あるいは衣掛けの不行き届きより生ず。
あるいは糊多き練玉を用ゆるに原因するなり。
次回は「雷丸仕込み心得」について、明治の花火師の技術を読み解きます。