花火史blog Written by 花火歴史家

明治時代の花火「竹筒と尾との関係」を読み解く|技藝百科全書より

歴史

竹筒と尾との関係とは?

龍星は、一直線に空へ昇るよう設計された大型のロケット花火。
そのためには「竹筒と尾」のバランス調整が欠かせません。

竹筒と尾の調整方法

  • 竹筒に九・二・一剤を詰めた後、竹の皮を剥いて肉を薄くする
  • 尾を取り付け、釣り合いを確認
  • 胴の端から尾までの長さを目安に、棒や指でバランスを測る

釣り合いの状態とその影響

  • 頭が重い → 頭部が垂れ下がる
  • 尾が重い → 頭部が上を向く
  • 均衡 → 真っ直ぐに打ち上がる

尾の形状について

  • 尾が曲がっていると「鍋蔓形」に軌道が曲がる
  • 必ず真っ直ぐな尾を選ぶことが大切

現代との比較・考察

現代のような工業製品は無く、天然素材を利用していた時代。素材のクセを知りつくした「手仕事の精度」の高さがうかがえる。

参考文献

  • 『技藝百科全書 第五編』
  • 著:内山正如・野口竹次郎
  • 発行:博文館(1889年)

原文(技藝百科全書より)

▼ 原文を表示する

竹筒と尾との関係

龍星は先に緒言において大略説明せし如く、筒の中に九二一剤を詰め、尾を付けて調子を取り、具合よく一直線に上天せしむるものなれば、従ってその胴と尾との関係に秘傅を供ふるものなりとす。
胴は内部に用剤を詰め終わって後に、皮を剥きその肉を薄くなすを要す。
そして尾を付くるなり。
尾と竹筒との釣り合いを見るには、胴の丈を以って胴の端より尾に至りたる丈を程度と見積もり、その処にて指なり棒(滑らかならざる)を取って測るべし。
しかし頭部の量重くば頭部は徐々に垂れ下がるべし。
尾部重ければ頭部は次第に上るべし。
頭尾平均して全く釣り合いを保たば具合良かるべし。
また尾は決して曲がりたるものを用ゆ可からず。
もし尾の曲がりたるものを用ゆれば龍星はまた曲がりて上り、いわゆる鍋蔓形となるべし。

次回は「焔硝詰め込み心得」。詰め込み方で花火の質と安全性が左右される技術を解説します。