花火史blog Written by 花火歴史家

明治時代の花火「錐揉みの注意」を読み解く|技藝百科全書より

歴史

錐揉みの注意とは?

火薬を詰め終えた流星に対して行う最終工程が「錐揉み」です。
これにより、火の通り道の安定性が決まります。

錐揉み手順とポイント

1. 錐の差し込み方法

  • 竹筒の節側から錐をゆっくり差し込む
  • 硬い部分は無理をせず、慎重に作業を進める

2. 熱対策

  • 摩擦熱により錐から発火するリスクがある
  • 作業中は錐を冷水に浸し、こまめに冷やす

3. 作業環境の注意点

  • 埃が多い場所では作業を行わない
  • 異物混入は事故の原因となる

4. 錐揉みの深さ

  • 筒の径が一寸なら、詰め止まりから一寸下まで
  • 深すぎると火薬が吹き抜ける危険性あり
  • 浅すぎると龍勢が頭を垂れて失速する

参考文献

  • 『技藝百科全書 第五編』
  • 著:内山正如・野口竹次郎
  • 発行:博文館(1889年)

原文(技藝百科全書より)

▼ 原文を表示する

錐揉みの注意

龍星は錐揉みを最要となす。
第二十七において詰め終りたるものには錐揉みをなす。
この錐揉みは節の方より徐々に揉み込むべし。
その大なるものはまた非常に堅きを以って容易に揉み込み能はざるべし。
錐は揉み込み中、しばしば抜きて冷水の中に浸すべし。
如何となれば次第に熱を起こし錐を焼き、また時として全く火を生するに至るべし。
また塵埃多き処にて錐揉みをなすは良しからず。
錐揉みの寸法は筒孔の径もし一寸ならば筒口(焔硝の詰め止まり)を下がる事一寸までにして休むべし。
総て筒径の寸法丈焔硝の詰め止まりより下に錐先を達せしむるを良しとなす。
もし余り揉み過ごさば直ちに吹き抜ける憂いあるべし。
余り足らざれば龍星は途中より頭を垂れて下り来たるものなり。
加減能く覚えざるべからず。

次回は「仕掛け燈火に付いて」。様々な形を造り、吹き出しを添えて表現する煙火について詳しく解説します。