明治時代の花火「焔硝詰め込み心得」を読み解く|技藝百科全書より
焔硝詰め込み心得とは?
火薬(九・二・一剤)を竹筒に詰める工程で、花火の質と安全性が左右される──
そんな細やかな技術が記されたのが「焔硝詰め込み心得」です。
詰め込み手順と注意点
1. 詰め方の基本
- 九・二・一剤は水分を少し含ませる
- 少量ずつ詰めて槌で15〜20回程度打ち固める
- 強く打ちすぎると竹筒が破損するため注意
2. 使用タイミング
- できれば翌夜までに使用するのが最適
- 長期保存は避けるべき
- やむを得ない場合は土中に埋めて保管
3. 乾燥による危険性
- 乾燥が進むと破損のリスクが高まる
- 特に「錐揉み済」のものは水分の蒸発に注意
参考文献
- 『技藝百科全書 第五編』
- 著:内山正如・野口竹次郎
- 発行:博文館(1889年)
原文(技藝百科全書より)
▼ 原文を表示する
焔硝詰め込み心得
九二一剤は稍水分を含ましめて竹筒に詰めざる可らず。
そして一匙十五六槌より二十槌を以ってす。
人に因りては一時に多分を入れて、やはり多く槌を下すことあれども、少量を入れ漸々打ち堅めるの良きに如かざるなり。
非常に強く槌を下さば、竹筒は破砕するの恐れあるべし。詰め終りたるものは翌夜などに揚ぐるをよしとす。
永く貯ふるとこは良しからず。
もし不得止永く貯えざるを得ざらば、土中に埋め置く可し。
しからされば水分を脱すれば次第に乾破するの恐れあり。
錐揉み済のものは最も然りとす。
次回は「錐揉みの注意」。龍星作りの最も重要な工程をご紹介します。