明治時代の花火「星輪」を読み解く｜技藝百科全書より

星輪

半菊弓輪星において述べし如く、数十の白焔を以って輪を現すものを云う。
用意したる丸玉張り子に（傅火管を通じたる半分を指す）、傅火管を通し得べき穴を備えたる丸き板をはめ、切り口よりだいたい二、三分を下げ、中央に発薬を置き、張り子に沿って一列に白星を並べ、片方の張り子にも丸板をはめ、同じく張り子の切れ目より二、三分を下ろし、これを以って前の物を覆うなり。
仮に一物をも詰めずしてこの丸板をはめたるまま、双方の張り子を合わす時は、張り子の内部は三つの空穴を供ふるなり。
その上下両部には半円形の空穴を供へ、中部には平円の空穴を供ふるなり。
この平円なる空穴に星を輪形に並べ、そして星輪を出すなり。
然れども星輪、半輪菊、覆輪菊及び星輪の類に属するものは、不規則の躰を以って破砕せしむべからず。
故に何れも張り子に矢を付け、一定の躰を以って破砕すべき様せざる可からず。
よって左に矢竹を付くる方法を示すべし。
もし矢を付するに至らは、傅火管、矢竹の中心より通し張り子の中心、あたかも発薬のある部分より竹の外に火を吹き出し、発薬に火を伝ふる様すべし。
右の如くなさんには、あらかじめ竹に四角なる穴を明け置かざるべからず。
そしてこの矢竹は二枚の丸板を貫き、尚後部の張り子を抜けて二、三寸を出す。
故に組み立ての際には、後部の張り子、丸板とも側に取り除け置き、まず傅火管に通したる方の張り子に組み立て終わりてのち、第二の丸板、次に張り子と順次を定むるなり。
発薬は、胴焔硝と称するほとんど小豆小粒程なるものを傅火管の周囲に入られ可き丈詰め、白焔星はあらかじめ形良く作り、大小なき様注意し、張り子はこれらの飛び出し易き様、少々づつけ置くも可なり。
矢の付け方については、先に述べし如く傅火管を通ずる処より後部の張り子外に出るまで、一本のものを用ゆるあれども、昨今は後部の丸板以上のみにして傅火管を通ずる方に用ひさるもの多し。