明治時代の花火「千輪遅れ真菊」を読み解く｜技藝百科全書より
千輪遅れ真菊とは？
「千輪遅れ真菊」は、たくさんの小さな菊（千輪菊）が最初に開き、
その後、遅れて中央に真菊が開くという美しい演出が特徴の花火です。
この「遅れ咲き」の構造により、観る者に余韻を残す立体的な美しさを実現しています。
製作構成と手順
1. 構成の概要
- 基本構造は「菊畑」と類似
- 千輪菊の中に遅れて開く真菊を中心に配置
2. 真菊のサイズと詰め方
- 使用する真菊のサイズは2寸（約6cm）または3寸（約9cm）
- 構造は基本的な菊玉と同じく、中心に発火薬を配置
- 時間差で咲くように導火線の設計が施される
現代との比較・考察
千輪遅れ真菊は、時間差による演出の妙が光る構造です。
現在でも似た構成の花火はありますが、職人の経験と勘が頼りだった明治時代に生まれた技法です。
参考文献
- 『技藝百科全書 第五編』
- 著：内山正如・野口竹次郎
- 発行：博文館（1889年）
原文（技藝百科全書より）
▼ 原文を表示する
千輪遅れ真菊
菊畑と相似たり。千輪菊形乱れて真菊を現すなり。
詰め方はやはり菊の如くなし。二寸あるいは三寸用の真菊を入れるなり。
次回は「真菊禿菊打分」を解説予定。お楽しみに！