明治時代の花火「雨中雷後の遊龍」を読み解く|技藝百科全書より
雨中雷後の遊龍とは?
「雨中雷後の遊龍」は、雨、雷、そして夜空を舞う龍という3つの要素を組み合わせた幻想的な花火演出です。
明治22年の『技藝百科全書』には、この構成が簡潔ながらも明確に記述されています。
製作構成と手順
1. 雨と雷の演出
- 雨:柳剤を細かく砕いたものを使用
- 雷:雷鳴を表現する火薬で再現
2. 遊龍の演出
- 雷の後に登場する龍は、「昼揚燈火」と同じ構造
- ただし夜煙火用に素材や火薬が調整されている
3. 使用素材の違い
- 柳剤:夜煙火用の特別な配合を使用
- 遊龍:夜間用に設計された龍剤を使用
現代との比較・考察
この花火は、単に美しさを追求するだけでなく、「自然現象の流れ」を一つの作品として表現しています。
現代の演出に通じるコンセプトでありながら、細部の素材や仕込みに職人技が光ります。
参考文献
- 『技藝百科全書 第五編』
- 著:内山正如・野口竹次郎
- 発行:博文館(1889年)
原文(技藝百科全書より)
▼ 原文を表示する
雨中雷後の遊龍
雨を出し雷鳴を聞き後、暫時にして遊龍を見るなり。
昼揚燈火二に示す処のものと、その組み立て一なり。
ただ夜煙火なるが故に、雨は柳剤の詰め砕きにしたるものを用ゆ。
龍もまた夜煙火用のものを用ゆ。
他は皆異なることなし。
次回は「吉原夜桜の景」をご紹介します。夜桜と江戸の艶が交差する、華やかな演出にご期待ください。